私たちの思う安全教育とは

今ある危機、そして将来の危機からの安全を考える教育

いま目の前に子どもの命を脅かしてならない多くの事柄が山積みになっています。
なかでも犯罪そして大地震からの危機には大変なものがあります。誰でも危ないことはなるべく忘れ考えたくないものです。
特に体も知恵も十分でない、しかし豊かな未来が待っている子どもの命が理不尽に脅かされることは考えることさえしたくないことです。
しかしそのような「考えることさえしたくない」ことは、もう、許されない時代になったのです。犯罪からの子どもの被害は確かにここ数年減ってきていります。
しかし減った背後をみると、決して何もせずに減ったのではなく、おおぜいの大人の人たちによる不断の見守り活動がなされていることは間違いありません。
この見守り活動の手をゆるめたらどういうことが再び起こるかは十分イメージできることであります。
実際、2014年9月、兵庫県で小学1年生の子が誘拐され殺害されました。放課後一人で歩いているところを男に連れ去られ、犯人自宅そばで遺体で発見されました。
2015年7月には、奈良で小学6年生の女の子が誘拐されました。無事に保護されましたが、小学生6年生でも一人でトイレに行かせることが危険であると思われた事件でした。
同年8月には中学2年生の男女が、男に誘拐され、二人とも殺害されました。二人でいても、中学2年生でも危ないのだということが分かりました。
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少年たちが誘拐されたと思われる現場(寝屋川 清永奈穂撮影)

2015年の犯罪白書を見ると、子どもの犯罪被害のうち、強制わいせつが1095件、略取誘拐・人身売買は109件も起きています。

犯罪は人、場所、時間、手口、そして心の「隙間」からおきます。まさかうちの子が、まさかこの場所で、まさかこの時間に、こんなことを、、
という隙間を狙って犯罪者は近づいてきます。隙間を埋めるには、見守りの目はもちろん必要ですが、それだけではなく、最終的に一人になった時に自分で自分を守れるか、
守るための安全基礎体力がついているか、が非常に大切になってくるのです。
ところが、犯罪に遭遇した時に、子どもたちがどうしたか。私たちの調査では、走って逃げれた子どもは46.4%いましたが、
声を出すことができた子どもは2.5%、防犯ブザーを鳴らせた子どもは0.8%、何もできなかった子どもは19.7%もいました。
(2010年犯罪からの子どもの危機実態に関する研究 ㈱ステップ総合研究所)
いざとなると呆然とし、叫ぶこともブザーもならせず、何もできないでいる子どもが多いのです。
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また地震についても同様な危機が強調されます。1995年に発生した阪神淡路大震災では、569人の子どもが(20歳以下の子ども)亡くなりました。
その子どものほとんどは大揺れ直後の建物倒壊から約15分後までになくなり、圧死、窒息死で即死した子どもが大半を占めました。
一瞬に大ケガを負った子どもが何人いたか今はもう数えることもできません。
最近では、この大地震が東海地方を中心に30年の内に起きるだろう、といわれ続けています。
たとえばこの30年間に大地震が起こる可能性が極めて高いと考えてみましょう。
皆さんは「30年間」という時間をどうとらえますか。30年後と考えますか。それとも20年後、10年後に起こると考えますか。
答えは「30年の間に起こることが極めて高い」ということで、何もなく安全安心が続くだろうと考えている明日、あるいは今晩でも起きて不思議でないと言うことなのです。
誰でも危ないことが自分を巻き込んで襲いかかるとは考えたくありません。死者10万人、といわれてもその10万人の中に自分が入っているとは考えません。
だから毎日人混みの街中を安心して歩いて行けるのです。でも現在予想されている大地震が襲ったとき、悲劇が降りかかってくることは確かなことです。

発達段階に沿った体験的な安全教育を

ではどうしたらよいか。大地震の激しい揺れに曝されるのは「私」です。その一瞬は、誰も助けに来てくれることはできません。
自分の細い手や足、身体全体で危機を跳ね乗り越えて行くことしかないのです。
跳ね乗り越えて行くことは、前もっての知識や身のこなしを体得しておけば十分にできます。
逆にそうした知恵や身のこなしを体得しておかねば、どんなに助けようと思っても助けることはできないのです。
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体育館が崩れ落ちた小学校。「くしゃっ」っと柱や階段が歪み、崩壊した。(2011年10月 清永奈穂撮影)

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波にさらわれた小学校の体育館。海を近くで眺められる美しい学校が、一瞬のうちに無残な姿に。(2011年10月 清永奈穂撮影)

私たちは犯罪そして地震からの危機に正面から向きあい立ち向かい乗り越えてゆくためには「その時に必要とされる自分の知恵と力」が絶対に必要だ、という強い思いがあります。
どうか少しでも多くの子ども、保護者、先生そして地域の方々に読み学び実行していただきたいと思います。
これまで、全ての子どもの笑い声が21世紀中続くようにというに思いを込め、「その時」に役立つ研究と実践を心がけてきした。
危機とはなにか知識と知恵を得て、危ないときにどうしたらよいか自分で考え、いざという時に勇気を出して実行できる、
そういう子どもに育てるために、ぜひ、体験プログラムを知っていただきたいと思います。
自分の身を守ることだけではなく、周りの人々も助け、安全な街をつくれる子どもになるためにも、大人も子どもも一緒に、実際に体験していただきたいと思っています。